経費の仕訳を頼むとき、「上から3番目の領収書」と口頭で伝えて、相手が数え間違えたことはないだろうか。
実はこれは、私たちの会社でAIに起きたことである。
結論を先に言う。人にも機械にも選んでもらう一覧には、必ず番号(識別子)を付ける。番号が無い列があると、そこだけは必ず誰かが並び順で数える。そして、1つずれた番号は、エラーにならない。
番号の無い区分が1つだけあった
自社では、AIが出した判断を台帳に1件ずつ残し、実行が終わったものから番号で指定して閉じている。一覧は6つの区分に分かれていた。5つは番号つきで表示されるのに、6つ目の「社長本人にしか実行できないもの」だけ番号が出ていなかった。
番号が無ければ、並び順を数えるしかない。2026年9月20日、そのとおりになった。台帳は1行目を1番と数え、閲覧ツールは0番から数えていた。1つずれる。
結果は2件だった。動作確認用の行を閉じるつもりで打った番号が、隣にあった実在の案件のカードを閉じた。もう1件も、別のカードを保留にした。エラーは出ていない。ずれた先にも行は存在するので、画面は何事もなく更新された。
人の職場なら、こうなる
つまり、これは「担当者が不注意だった」話ではない。指す方法が『並び順』しか無かったことが原因である。
「3番目の領収書」「あの件」「例のお客様」。名前や番号を付けないまま受け渡す仕事は、人の職場にいくらでもある。ずれても相手は黙って別のものを処理し、誰もそれに気づかない。
私たちは同じ型の事故を2回踏んでいる。1回目は9月3日、時刻で行を探したため、同じ時刻の隣の行にも判子が押された。対策として行番号に変えたら、今度は数え始めがずれた。指し方を変えても、誤り方の形が変わるだけで、誤りは消えなかった。
直したあとも、穴は残っている
9月21日、番号を出すように直した。社長本人の手番の17件で確かめると、並び順と番号が一致する行は0件だった。画面を数えて指定していたら、17件すべてが別のカードに当たっていたことになる。
一方で、番号の出ていない区分がまだ2つある。誤って閉じた2件は、その後正規の手順で閉じ直されたので、誤爆の瞬間の記録は台帳に残っていない。自動の試験も、この部分については0件である。過去に他にもずれがあったかどうかは、数える手段が無く、分からない。
自社で確かめる3つの問い
- 人に選んでもらう一覧(案件・請求・候補者など)に、必ず固有の番号が付いているか
- 取り違えたとき、エラーで止まるか。それとも静かに別のものが更新されるか
- 取り違えの跡を、あとから読み返せる記録があるか
2つ以上「いいえ」なら、仕事の受け渡しに穴があるかもしれない。目安であって実証ではないが、AI診断で現状を確かめてみてほしい。


