社長に承認へ出せる時間が、1日45分しかない。そのとき、部下に何を任せ、何を自分で握るべきだろうか。
実はこれは、私たちの会社でAI6体を動かすときに実際に決めたことである。承認の枠は、1日3回・各15分の45分と設計した。この枠を超えたら、体制のほうが間違っている、という決め方にした。
結論を先に言う。
- 承認が詰まる場所は、作業の速さではなく、人の返事を待つ間である。
- 承認時間を守る方法は、承認を速くすることではなく、承認の対象を絞ることである。
- 任せる線は「重要かどうか」ではなく、「取り返しがつくかどうか」で引く。
5日間で117件、社長に上がったのは38件
2026年9月2日から6日の判断台帳を集計した(自社計測)。台帳に載った判断は117件。そのうち社長の決裁に回したのは38件(約32%)で、残り79件はAI側で確定させた。つまり3件に2件は、人に聞かずに決着している。
社長に上げた38件のうち24件は、上げる理由が決まっていた。社外に出る行為13件、物理的な作業5件、金銭が動くもの4件、取り消しのきかない削除2件である。残る14件は、方針や好みが割れて自動では判定できなかった。
返事までの中央値は7.7時間だった
社長が答えた31件で、台帳に載ってから回答が入るまでの中央値は7.7時間。最長は21.2時間で、24時間以内には31件すべてが返った。3時間以内は5件にとどまる(自社計測)。
「すぐ返している」つもりでも、実測にははっきり差があった。この差を認めて設計するのが分かれ目だと、私たちは考えている。承認待ちの案件は保留にして、別の仕事を先に進める。たとえば営業の商談のカルテ化なら、社内の下書きは進め、社外に出す文面だけを承認待ちにする。
45分には収まっていた
38件を5日で割ると、1日あたり約7.6件。1件5分と見込むと約38分で、45分の枠に収まった計算である(自社計測)。ただしこれは、1件5分で判断できる形にAI側の出力が整っていた場合の話だ。判断が長引いた件は、どれも選択肢が整理されないまま投げられていた。
任せる線は「取り返しがつくか」
社内資料の作成、記録の整備、調査、下書きは、AIが決めて実行し、事後に報告する。間違っても取り返しがつくからだ。社外に出る行為、金銭、物理作業、取り消せない削除は、社長が握る。
重要度で切ると、ほぼ全部が重要になって何も任せられない。取り返しがつくかという基準ひとつに変えたら、任せられる範囲が広がった。なお、社長が答えないまま条件を満たして代理で決裁した件が5件、未回答のまま残る件が2件あり、0件ではない。
自社で確かめる3つの問い
- 承認に使える時間の上限を、先に決めているか。
- 任せる線を「重要度」で引いていないか。「取り返しがつくか」で引けるか。
- 承認を頼む側は、選択肢をA案・B案まで詰めてから上げているか。
2つ以上「いいえ」なら、任せ方を見直す余地があるかもしれない。あくまで目安であり実証ではないが、AI診断で現状を確かめられる。


