週に1回だけ更新する在籍者名簿が、途中で切れた状態のまま確定されたら、毎日の「名簿にない人は退職扱い」という処理はどうなるだろうか。
実はこれは、私たちの会社でAIの収集の仕組みに起きたことである。
結論を先に言う。更新の頻度が違う2つの仕事をつなぐとき、片方が壊れても、もう片方はそれをそのまま信じてしまう。安全装置は症状を止めてくれるが、原因は教えてくれない。
6晩連続で、削除が止まった
自社R&Dでは、外部の求人サイトからデータを自動で集めている。夜は新着・更新分だけを取り、週に1回、全件を取り直して「今も掲載中の一覧」を作る。掲載が終わった求人は、この一覧に無いものとして毎晩削除される。
削除は取り消せないため、「消す予定が保存件数の3割を超えたら見送る」安全装置がある。9月22日から27日、これが6晩続けて発火した。
最初は「夜の取得件数が少ないのでは」と疑った。実測すると3,600〜4,100件で、正常時と同じ水準だった。疑いは外れていた。
真因は、途中で切れた名簿
9月21日の週次の取得は、サイトの申告する全件数140,731件に対し26,595件(18.9%)で途中打ち切りになっていた。それでも古い基準は通ってしまい、壊れた一覧が確定した。保存していた19,983件のうち14,197件(71%)が、「一覧に無い=掲載終了」と判定された。安全装置は設計どおり正しく動き、ただ止め続けていた。
もう1つ見つかった。一覧は週1回しか作られないので、週の途中で公開された求人は載りようがない。それなのに、その晩のうちに削除対象になっていた。削除対象のうち5,404件は9月21日以降の公開だった。
人の職場なら、こうなる
ポイントは、元の名簿が信用できるかを、使う側が確かめていないことである。
月初に作る名簿に、月の途中で入社した人は載らない。それを知らずに、毎日の処理が「名簿にない人は無効」と読めば、入社したばかりの人が消える。
直したあとの現在地
名簿を上書きする条件を厳しくし、公開直後のものは削除対象から外した。削除対象は14,197件(71%)から8,209件(41%)に減ったが、安全装置の基準はまだ超えていた。9月27日の取得は申告数の8.0%(11,666件)とさらに悪化したが、新しい基準が働いて一覧は更新されず、壊れたデータは本番に伝わらなかった。
分かっていないことも多い。なぜ週次の取得が途中で切れるのか、原因は未特定である。 9月14〜20日に消えた新着21,489件は、自動では戻らない。
自社で確かめる3つの問い
- 週・月に1回作る名簿やリストを、毎日の処理がそのまま信じていないか
- そのリストが「半分しか取れていない」ときに、止まる仕組みがあるか
- 安全装置が鳴ったとき、止めるだけで終わらず、原因まで追う手順があるか
2つ以上「いいえ」なら、見直す余地があるかもしれない。目安であって実証ではないが、AI診断で確かめてみてほしい。


