部下が自分で決めたことを、上司が確認する前に実行してよいだろうか。確認のための待ち時間を置いたら、5日間、誰も止めなかった。それでもその待ち時間は、無駄だったと言えるだろうか。
実はこれは、私たちの会社でAIに起きたことである。自社のAIが決めたことは、決めた瞬間には実行されない。意図的に待ち時間(冷却期間)を挟んでいる。
結論を先に言う。
- 待たせる基準は「重要度」ではなく「取り消しにくさ」に置く。
- 時間を置くだけでは足りない。実行の前に、一度は人の目に触れる条件を並べる。
- 「遅い」と感じたら、待ち時間の前に、順番待ちを測る。
5日間・146件で、異議は1件だった
2026年9月2日から7日までに台帳へ積まれた決裁は146件。人から異議が出たのは1件だった。しかもそれはボタンの動作確認用に作った検証用の決裁で、実務の判断への異議は0件である(自社計測)。
ただし、0件と言えるのは、全件が一度は見える場所を通ったからだ。通っていなければ、異議がないのか、見ていないだけなのか区別できない。ポイントは待ち時間の長さではなく、「実行前に外から見える場所に出る」ことだった。
待ち時間は、取り消しにくさで3段に分けた。削除や公開は24時間、作り直しは6時間、記録や点検は2時間。146件のうち50件(34%)が最長の24時間に入った(自社計測)。たとえば経費の仕訳なら、記録の修正は取り消せるので早く通し、支払いの確定は取り消しにくいので待たせる、という考え方である。
例外は、理由ごとに1か所へ
社長本人が押した決裁だけは、待たせない。この例外を2つの条件の片方にしか入れなかったため、2日続けて事故が出た。押したのに丸1日なにも起きない状態が、2件あった(自社計測)。同じ理由の例外が2か所に書かれていたので、片方だけ直ったのである。人の職場でも、同じ規則を別々の書類に書けば、片方だけ改訂される。
待たせていたのは、冷却期間ではなかった
実行済み99件で、台帳に載ってから実行されるまでの中央値は22.7時間だった。ところが待ち時間が明けた後の待ちは、24時間段で中央値1.6時間、2時間段で19.1時間。いちばん短く設定したものが、解禁後にいちばん放置されていた(自社計測)。
つまり、遅れの主因は待ち時間ではなく、実行の順番待ちだったと私たちは考えている。ただし母数は146件、期間は5日間と小さい。同じ傾向が続くかは、まだ言えない。
自社で確かめる3つの問い
- 部下やAIが決めたことは、実行の前に、誰かの目に一度は触れる場所へ出ているか。
- 「待たせる」基準は、重要度ではなく、取り消しやすさで決まっているか。
- 「遅い」原因を、目立つ規則のせいにしていないか。順番待ちを測ったことはあるか。
2つ以上「いいえ」なら、任せ方を見直す余地があるかもしれない。あくまで目安であり実証ではないが、AI診断で現状を確かめられる。


