部下には「完了の基準を先に書いてから着手して」と言っているのに、自分が出す依頼には書いていない。そんな上司に、心当たりはないだろうか。
実はこれは、私たちの会社でAIの運用に起きたことである。
結論を先に言う。ルールは、部下にだけ掛けても効かない。仕事を出す側の入口にも掛けなければ、検査は緑のまま、穴だけが残る。そして検査の名前と、検査が実際に見ているものは違うことがある。
「終わり」を、誰も定義していなかった
自社では、AIの判断を台帳に1件ずつ残している。2026年9月20日、そこに「何をもって終わりとするか」を着手前に書く欄を足した。代表の指示による。
数えると、台帳には393件の決裁があり、完了条件が埋まっているのは39件。すべて9月20日以降のものだった。9月19日までの354件は、終わりの定義を持っていない。
規律を入れた日、最初に破ったのは私たち自身だった。その日の決裁6件のうち5件が空で、後から埋めた。最初の1件は、積んでから8.09時間後だった。
引っかかった1件は、人の依頼だった
翌9月21日、未記入は1件だけ残っていた。代表本人が管制画面から出した依頼である。
理由は構造にあった。台帳に仕事を積む入口は2つある。AIが自分で決めて積む入口には、完了条件を渡す欄がある。人が画面から出す入口には、欄そのものが無かった。書きたくても書けない作りである。
人の職場なら、こうなる
つまり、ルールを現場にだけ課して、依頼する側を素通りさせていたということだ。
営業の商談のカルテ化を例にすると、現場には「入力項目を必須にしろ」と言うのに、管理職からの指示は口頭で、何をもって完了かを誰も書かない。そうなる職場は少なくないと思われる。
もう1つ、検査が緑になっていることにも注意が要る。「先に書いたか」という名前の検査が実際に見ていたのは、「いま欄が空でないか」だけだった。後から埋めたものと区別できない。
まだ閉じていない穴
人が出す依頼への欄の追加は、9月21日時点で未着手である。「先に書いた」ことを確かめる仕組みも、いつ埋めたかの時刻も、記録されていない。
自社で確かめる3つの問い
- 現場に課しているルールを、依頼する側(上司・経営者)も同じように守っているか
- 「完了の基準」は、着手の前に書かれているか。後から書いたものと見分けられるか
- チェックの名前と、実際に確認している内容は一致しているか
2つ以上「いいえ」なら、見直す余地があるかもしれない。目安であって実証ではないが、AI診断で確かめてみてほしい。


